発毛剤プロペシア(フィナステリド)のAGA薄毛・抜け毛への効果と気になる副作用は?
前立腺肥大症治療薬
多くのAGAクリニックで処方されるプロペシアですが、1992年に前立腺肥大症(BPH)の治療薬として、1997年にAGA治療薬(男性型脱毛症治療薬)としてアメリカのFDAで認可されました。
発毛医薬品(AGA医薬品)としてはプロペシアですが、この中で発毛効果が認められた成分がフィナステリドとなります。フィナステリド錠のジェネリックとしてファイザー、サワイ、クラシエが有名ですが、フィンペシアや海外製ジェネリック医薬品などもあります。
前立腺肥大への効果のメカニズム
まずは、プロペシアが前立腺肥大症の治療薬として、どのような効果があるのか見ていきます。
前立腺肥大の薬には、以下の3つがあります。
治療薬 | 効果 |
---|---|
α1受容体遮断薬 | 前立腺付近の筋肉を弛緩させて排尿を促す |
抗アンドロゲン剤 | 精巣からテストステロンが生成されることを抑制する |
5α還元酵素阻害剤 | 5α還元酵素の作用を抑制する |
プロペシアは、広義には抗アンドロゲン剤に分類されることもありますが、より正確には5α還元酵素阻害剤になります。
睾丸や副腎から分泌されるテストステロン(男性ホルモンの一種)は、血液を通して前立腺の細胞にまで到達します。この前立腺の細胞の細胞質には、5α還元酵素が存在しています。この還元酵素の働きによって、血液から運ばれてきたテストステロンはジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。
テストステロンからジヒドロテストステロンへの変換
テストステロンの化学式はC19H28O2で、ジヒドロテストステロンはC19H30O2となります。
ジヒドロテストステロンは、テストステロンと比べると、H(水素)が2つ増え、水素が2つ余分にくっついたことを表しています。「ジヒドロ」とは、「水素が2つ結合した」を意味します。
高校化学の「酸化・還元反応」で勉強するのですが、ざっくり言いますと、酸化反応は酸素が結合する反応で、還元反応は水素が結合する反応です。
つまり、テストステロンを還元する(水素をくっつける)物質が存在することになります。それが、5α還元酵素です。
前立腺の細胞の細胞核には、ジヒドロテストステロンと結びつくアンドロゲン受容体(男性ホルモン受容体)があります。
ジヒドロテストステロンとこのアンドロゲン受容体が結びつくと、前立腺は細胞増殖のための遺伝子を発現します。
ここでジヒドロテストステロンが前立腺に強く働きかけ過ぎてしまい、前立腺の細胞増殖に異常がでてしまいます。これが、前立腺肥大の原因です。
プロペシアの効果
プロペシアは、5α還元酵素阻害剤で、その総称のとおり5α還元酵素の働きをブロックします。正確には、プロペシアに含まれるフィナステリドと呼ばれる成分がその働きを担っています。
フィナステリドによって5α還元酵素の働きがブロックされれば、テストステロンはジヒドロテストステロンに還元されることもなくなります。
すると、前立腺のアンドロゲン受容体に結びつくジヒドロテストステロンの数は減少しますので、前立腺の異常な細胞増殖が抑制され、肥大した前立腺が通常のサイズに戻るのです。
これが、フィナステリドが前立腺肥大に効果がある理由です。
フィナステリドのAGAに対する効果とメカニズム
フィナステリドを服用すると、フィナステリドは血液を通して全身に行き渡ります。毛乳頭に到達すれば、毛乳頭の5α還元酵素を阻害することになります。
(実は、5α還元酵素は前立腺の細胞の細胞質だけに存在するわけではなく、毛乳頭細胞の細胞質にも存在します)
また、テストステロンは精巣付近だけに存在しているわけではありません。血液を通じて、毛乳頭にも供給されています。ですので、毛乳頭の細胞質に5α還元酵素が存在するかぎり、毛乳頭においてもジヒドロテストステロンが生成されるわけなのです。
ところで、ジヒドロテストステロンが毛乳頭に取り込まれてしまうと、脱毛因子が分泌されてAGAになってしまうことはよく知られています。
つまり、ジヒドロテストステロン(DHT)は脱毛症の原因になります。
しかし、フィナステリドを服用すると、前立腺肥大の場合と同じように5α還元酵素の働きをブロックします。前立腺だけでなく毛乳頭でもジヒドロテストステロンが生成されることを防いでくれるので、AGA(男性型脱毛症)の予防(薄毛治療)を行うことができます。
副作用
発毛剤にかぎらず、医薬品全般に言えることですが、やはり気になるのはその副作用です。
医薬品の成分であるフィナステリドは、副作用のリスクがあると報告されています。飲むタイプ(服用薬)と塗るタイプ(外用薬)が存在しますが、いずれにおいても副作用のリスクがあることには変わりありません。
フィナステリドは発毛に高い効果がありますが、それだけ体に多大な作用(負担)を及ぼす医薬品でもあるということに注意しましょう。
まずフィナステリドは、副作用としてホルモンバランスに悪影響を与えることが知られています。
性的不能(勃起機能不全)や性欲減退といった男性機能の低下、体が女性の特徴をおびてくる女性化などが挙げられます。ほかにも、抑うつ症状や肝機能障害を引き起こすリスクが指摘されています。
妊娠中や授乳中の女性が使用することは大変危険です。フィナステリドは前立腺疾患の薬ですので、胎児や子どもの生殖器にも影響を及ぼします。
単に肌に触れるだけでもそこから吸収されて胎児に悪影響を及ぼすリスクがありますので、女性の方はとくに注意が必要です。
FDAのリスク警告
フィナステリドには前立腺ガンのリスクがあると警告されています。
米国食品医薬品局(FDA)などは、フィナステリドの発ガン性について警告しています。フィナステリド5 mgを長期間服用すると、高悪性度前立腺ガンのリスクが高まるという内容です。
FDAは2011年に、前立腺ガンのリスクをフィナステリドの注意書きに明記することを勧告しています。
フィナステリドは前立腺肥大の薬ではありますが、同時に前立腺ガンのリスクが伴います。
海外から日本国内に、ジェネリック薬品などの個人輸入など、フィナステリドを入手るする方法もありますが、上記の危険性を考えて、自己責任で使用するのはリスクが高いことを認識しておきましょう。AGAクリニックなど薄毛治療専門病院に相談するのが一番です。
フィナステリドを使うには
お酒やたばこなどの嗜好品、不規則な生活を改めることで薄毛や抜け毛の対策ができれば望ましいのですが、それでもその絶大な効果から、フィナステリドを使用したいという方は多いようです。
それだけ効果が認められた医薬品ですので、副作用のリスクと薄毛・抜け毛の効果とをきちんと天秤にかけて購入を決めることが大切です。
たとえ用法用量を守っていても起こるのが副作用です。副作用のリスクをきちんと認識したうえで使用してください。
フィナステリドは医薬品ですので、基本的には医師に処方してもらってから使用できます。
個人輸入のメリットとデメリット
フィナステリドが毛母細胞に作用して、AGA薄毛治療に有効であることは男性型脱毛症診療ガイドラインにも記載されていることから、医療機関に行かずに新薬(先発医薬品)もしくはAGAジェネリック医薬品(後発医薬品)を購入する方もいます。この場合のメリットは、輸入経路や購入経路によっては費用を安く抑えられることです。
プロペシアは個人輸入でも入手することができますし、個人輸入代行オオサカ堂などでも販売されています。海外製の医薬品のなかには、医師処方に基づかなくても厚生労働省の特例によって入手できる医薬品があります。そのため、入手ルートさえ確保できれば手軽にプロペシアを入手できるというメリットがあります。
(参考→フィンペシア)
しかし、デメリットもあります。プロペシアの用法用量と副作用の因果関係については、まだ十分な臨床データがあるわけではありませんので、専門的な知識がない素人にとっておおきなリスクを背負うことにもなりかねません。
したがって、安全性の観点から考えても、個人輸入よりAGAクリニックなどで医師の処方を受けたうえで利用することをおすすめします。
まとめ
発毛剤として知られるプロペシアは、高い発毛効果が認められた医薬品です。このプロペシアの主な成分は、フィナステリドと呼ばれる成分です。
フィナステリドは、もともとは前立腺肥大の薬として開発されました。フィナステリドの作用が発毛効果にもつながるため、今では発毛剤の成分として広く知られるようになりました。
フィナステリドは高い発毛効果を発揮しますが、前立腺ガン、男性機能の低下、女性化、抑うつ症状などさまざまな副作用のリスクがあります。妊娠中・授乳中の女性はとくに、経皮吸収も注意してください。
個人輸入でも手軽に入手できるようにはなりましたが、それでもフィナステリドは副作用のリスクが大きな医薬品です。使用する場合には、AGAクリニックなどで処方してもらうようにしましょう。